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Carbon Accounting

カーボンアカウンティングを理解する:知っておくべきこと

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炭素会計とは、ある組織が自らの温室効果ガス(GHG)排出量を算出、分析、測定、報告し、第三者がもれなく確認できるようにする作業のことです。温室効果ガス会計や炭素監査、炭素インベントリ(目録)または温室効果ガスインベントリ(目録)、と呼ぶこともあります。団体や企業、地方自治体などの多くの組織が、温室効果ガス排出量を管理するために炭素会計を活用しています。

炭素会計では、民間企業や公的機関などが生み出す温室効果ガスを数量で示し、炭素排出量の把握に役立てます。また、どこが排出源になっているのかも割り出します。

世界では今、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにする「ネットゼロ」の達成が急がれています。その文脈で、排出量や排出源の情報はとても大切になってきます。なぜならそれらの情報がなければ、組織が気候に与える影響についてデータ開示することも、気候問題にとどまらない環境・社会・ガバナンス(ESG)戦略について世の中に伝えることも、また、十分な情報に基づく企業意思決定を促すこともできないからです。

では、どのように炭素会計を進めればよいのか?現在、組織や報告者のために、測定すべき項目や収集すべきデータ、温室効果ガス排出量の測定方法について、多くのガイドラインが存在しています。また、一連の作業を合理的に進め、データを処理して閲覧、利用できるようにする手段も、豊富に提供されています。

気候への影響に関する情報開示は、大企業だけの課題ではありません。本当の意味でネットゼロを達成するには、すべての組織が温室効果ガス排出量を測定し、世界に貢献しなければならないのです。本コラムでは、炭素会計について知っておくべき事柄を一通り解説し、今、炭素会計を始めることがなぜ重要なのかを説明します。

炭素会計って何?

組織が気候変動に与える自らの影響を理解するには、3つのスコープ(範囲)における温室効果ガス排出量を測定する必要があります。これらのスコープは、排出を合理的に分類、測定できるよう、国際的ガイドラインである「GHGプロトコル」で定められています。

  • スコープ1:組織の活動により、その場で直接生じる排出を指します。たとえば、オフィスビルの暖房のために敷地内で生じる温室効果ガス排出がそうです。
  • スコープ2:自組織以外から購入する熱や電気を通じた間接的な排出のことです。たとえば、オフィスの暖房に電力を使う場合、そのために発電所で生じる温室効果ガス排出が該当します。
  • スコープ3:企業のバリューチェーンから生じる間接的な排出のうち、スコープ2に含まれないものすべてです。たとえば、従業員の通勤による排出もここに当てはまります。

現在、多くの政府機関は、企業や団体に対して、スコープ1、2の報告を義務付けており、スコープ3の報告は一般的には任意なのが現状です。

スコープ1、2の排出は、社用車を電気自動車(EV)に切り替えたり、再生可能エネルギーを購入したりするなどで比較的簡単に削減できます。比較的シンプルな構造であるスコープ1、2 から炭素会計を始めるのがおすすめです。

一方、スコープ3の排出は、算出や削減が難しいことで知られます。温室効果ガスの排出は、供給業者(上流)から顧客(下流)まで、バリューチェーンのすべてが対象となるからです。逆に、いくつもの組織が絡んでいるからこそ、温室効果ガス排出量の包括的な削減方法が見つかる機会も生まれます。

一部の大企業は、スコープ3の炭素排出の重要性を認識することで、排出削減の取り組みを積極的に行っています。たとえば、飲料大手「ペプシコ」はネットゼロの達成を公約しています。そして、自社が2020年に排出した温室効果ガスの78%をスコープ3が占めていたと発表しています。

ちなみに、フォーブズ誌が発表した世界の大手企業上位2000社を非営利団体エネルギー・気候情報ユニット(ECIU)が調査した結果、ネットゼロの目標をすでに達成している企業は11%にとどまっている、という結果が出ています。

Net zero targets

”削減貢献量”とは?

削減貢献量とは、サプライチェーンの外で、自社の製品やサービスが原因で削減される温室効果ガス排出量のことです(任意報告)。スコープ4排出量とも呼ばれます。たとえば、低燃費タイヤの製造元の場合、そのタイヤを誰かが使ったことで削減(貢献)できる排出量を測定、報告する義務はありません。しかし、前述のGHGプロトコルには、削減貢献量を推計、報告するための手引きがしっかり盛り込まれています。

炭素会計はどこに報告する?

炭素排出の報告義務は、主に政府機関や地方自治体などが定めています。義務の範囲・内容はさまざまですが、大半はスコープ1、2のみ報告を求め、スコープ3排出に関する報告は一部の機関が”奨励”(義務ではなく)しているのみです。

たとえば、米国の温室効果ガス報告プログラム(GHGRP)は、炭酸ガス(CO2)圧入攻法を採用している石油・ガス採掘施設や燃料・産業用ガスの供給業者などに対し、温室効果ガス排出データを提出するよう義務付けています。また、英国のエネルギー消費・炭素排出報告制度(SECR)は、大企業に対し、エネルギー使用量と炭素排出量の報告義務を課しています。

さらに、欧州連合(EU)はより幅広く、温室効果ガス排出量だけでなく、気候目標達成に向けた政策、措置、進捗の報告をすべての加盟国に義務付けています。

炭素会計の報告者が知っておくべき基準、施策、機関

報告者が詳しく知っておくべき機関や施策には、GHGプロトコルのような直接的なガイダンスもあれば、気候変動に関するパリ協定のように、多くの地域や産業に影響する広範な取り決めもあります。

炭素会計を進める上で、理解すべきことは多いです。その中には自身の組織との関係が特に深いものもあるでしょう。広域的ガイダンスにのっとるだけでなく、地域独自のルールに従う必要があるかもしれません。以下、特に重要な基準や施策、機関を紹介します。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は1988年、国連環境計画(UNEP)世界気象機関(WMO)によって設立されました。国から市町村まで、あらゆるレベルの政府に対し、気候政策づくりのための科学的情報を提供する機関です。

IPCCは、炭素会計の基準を直接定めるわけではありません。しかし今後、IPCCの予測や評価を踏まえた形で、規制当局の政策が変更になる可能性があります。そうなると、ある国や地域で炭素会計が義務化されるかもしれません。IPCCの傘下に設置されているインベントリタスクフォース(TFI)は、各国による排出・吸収量の算定を支援する国別温室効果ガスインベントリプログラム(NGGIP)を運営しています。

GHGプロトコル

現在最も普及している炭素会計基準が、GHGプロトコルです。GHGプロトコルは、気候変動枠組み条約の京都議定書を土台に作成されました。京都議定書は、温室効果ガスの排出削減目標を定めた初の国際法で、1997年に採択されました。その後、米国の環境団体「世界資源研究所(WRI)」と国際企業 170 社の合議体「持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)」が共同でGHGプロトコルを作成し、改訂を重ねています。

GHGプロトコルは、温室効果ガス排出量のインベントリを作成する組織に対し、ガイドラインや基準を示しています。データ収集を簡素化し、データの整合性を高め、排出量の報告と管理に役立つ手段を提供する目的で作成されました。たとえば、「企業バリューチェーン(スコープ3)基準」は、バリューチェーンに沿って排出量を数値化することに役立ちます。

E負債会計

E負債会計は、バリューチェーン上流・下流からの温室効果ガス排出量の推計に関し、GHGプロトコルの短所を補う仕組みです。会計学者のロバート・S・キャプランと、公共政策学者のカーシック・ラマンナが提唱しました。2人は、報告者や規制当局がE負債会計を採用できるよう、産業平均データを使った推計を段階的に廃止することを推奨しています。

GHGプロトコルに基づく業界別ガイダンス

GHGプロトコルの枠に入りきらない数多くの産業では、業界独自のガイダンスが求められています。必要な手引き書をつくるため、GHGプロトコルの運営元と協力している組織もあります。以下、「ビルト・オン・GHGプロトコル(GHGプロトコルに基づいた発展系のガイダンス)」の認証マークを取得したガイダンスを紹介します。

カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)

カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)は、2000年に設立された非営利慈善団体です。国際的な環境情報開示システムを運用し、企業や地方自治体などによる環境への影響の測定・管理を支援しています。

CDPの活動概要は以下となります。

  1. 顧客や投資家が企業に対してCDPを通じた情報開示を求める。
  2. 企業は情報を収集し、その情報をCDPに提出する。
  3. 企業は提出データを使い、改善(排出量削減など)すべき分野を割り出す
  4. CDPは企業から集積した気候関連データを投資家や顧客に共有し、データが示す事実を伝える
  5. CDPは同活動において、企業から集積した報告データ・分析結果・企業スコアを活用する

CDPにデータを提出することは、競合他社との比較にも役立ちます。CDP報告の過程で得られる知見やデータによって、見逃していたビジネスチャンスが浮かび上がるかもしれません。CDPのスコアによって、競合間での自組織の立ち位置も見えてきます。

国際標準化機構(ISO)

国際標準化機構(ISO)は、国際規格の策定を目的とする非政府組織です。1946年に発足しました。2006年には、温室効果ガス管理のための規格を確立しています。

  • ISO 14064-1」:温室効果ガスの排出・吸収量を組織レベルで数量化し、報告する際のガイダンス。
  • ISO 14064-2」:温室効果ガスの排出・吸収量を事業レベルで数量化し、モニタリング、報告する際のガイダンス。
  • ISO 14064-3」:温室効果ガスに関する報告を審査、認証するためのガイダンス。

ISO規格は、GHGプロトコルを補完する役割があります。たとえば、温室効果ガスインベントリ作成については、GHGプロトコルは模範となる取り組み事例を示し、「ISO 14064-1」は最低限の基準を示しています。また、「ISO 14064-3」は温室効果ガス報告の審査基準を定めています。

ISOと世界資源研究所(WRI)、持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)は2007年、「ISO 14064」シリーズとGHGプロトコルの両方を普及させる、という了解覚書を締結しました。しかし、報告をする組織にとって関連のあるISO規格は、14064シリーズだけではありません。

  • ISO 14067」:製品の温室効果ガス排出量を数量化するためのガイダンス
  • ISO 14068」:現時点で未完成。温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」に関するガイダンス。
  • ISO 14069」:温室効果ガスインベントリに「ISO 14064-1」を適用するためのガイダンス。

科学的根拠に基づく目標(SBTi)

科学的根拠に基づく目標(SBTi)は、CDPと世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)が2015年に開始した取り組みです。科学的根拠に基づく排出削減目標を定める組織に対し、さまざまな支援を行います。

たとえば、排出削減の模範となる取り組み事例を提示したり、技術的な支援や専門的資源を企業に提供したりします。第三者評価の実施で企業を支援することもあります。また、科学的根拠に基づく目標(SBT)を設定することは、多くの規格において認証要件となっています。

気候変動に関するパリ協定

気候変動に関するパリ協定は2015年に採択され、炭素会計を発展させる重要な原動力となりました。炭素関連の規制や政策、報告基準の充実を促しただけでなく、同時に金融規制に沿ったものとなるよう後押ししたのです。その結果、どうやって温室効果ガスの排出を削減すべきか、多くの国が検討を始めました。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は2017年に発行した報告書で、明確かつ一貫した気候情報開示の様式を打ち出しました。この報告書に盛り込まれた提案は、あらゆる国・地域のあらゆる組織で使えるよう練られています。TCFDフレームワークの目的は、金融機関や投資家に対して、投資判断に利用できるデータや情報を提供することであり、そのために信頼性や比較可能性、先見性を重要視しています。

金融向け炭素会計パートナーシップ(PCAF)

金融向け炭素会計パートナーシップ(PCAF)は、2015年にオランダの金融業界で始まった取り組みです。2019年に世界に広がりました。投融資を通じて発生する温室効果ガス排出量の責任を投資元がどれくらい負うべきか、投資元である金融機関などが規格にのっとって測定、報告するためのガイダンスです。対象となる排出はスコープ3のうちカテゴリ15に分類され、投融資先の排出量とも呼ばれます。

PCAFは、金融業界向けのグローバル温室効果ガス会計・報告基準を作成しました。TCFDに沿ったリスク評価や、SBTiにのっとった科学的根拠に基づく目標設定、さらにCDPのようなステークホルダーへの報告に対し、基準を定めています。前述の「ビルト・オン・GHGプロトコル」認証も取得しています。

Carbon Accounting Standards

報告に必要なデータを確実に集めるには?

報告者が考慮すべき事柄として、データ収集の頻度と、組織内外のステークホルダーに対するデータの透明性の確保が挙げられます。なぜなら、意思決定の材料として使えるレベルの正確性が元データには求められているからです。

企業が収集したデータ(そしてそれらデータを元に算出される排出量データ)は、投資家が企業のリスク構造を見直すときや、企業の取締役がネットゼロ目標達成に向けた自社の進捗評価を行うときなど、重要な局面で使われる可能性があります。

炭素会計データが信頼に足るものかどうか。以下の条件をクリアしていることがひとつの目安になるでしょう。

  • 定期的に収集されていて、ステークホルダーが常時最新の情報で進捗状況を分析できる。
  • 企業規模が大きくなっても簡単に収集できて、同じ収集方法で大規模な事業活動にも対応できる。
  • 効率的に収集できて、適切なタイミングで判断を下すことができる。
  • 国際的に認められた規格にのっとった炭素会計が行われており、開示報告で求められるデータがすべて含まれている。
  • スコープ3を含むあらゆる炭素排出範囲を網羅している。
  • 排出源を明確に示していて、最も効果的な削減策を優先することに役立つ。
  • 集積データが簡潔に表示可能で、正確性や法令遵守、全般的な透明性を誰でも容易に確認できる。

また、炭素会計を行う組織は、データを閲覧する第三者の利便性にも配慮する必要があります。正確な情報は、パズルの最初の1ピースです。集まったデータは整然とまとめ、いつでも最新の状態にしておかなければなりません。投資家の求めに応じたり、対外的な事業報告書を更新したり、脱炭素目標設定のための判断を下したりと、さまざまな用途に備えるためです。

炭素会計の実践にありがちな問題とは?

炭素会計を実践しようとすると、いくつかのハードルに直面する可能性があります。たとえば、規制に習熟することや、データを収集することがそうです。また、収集したデータに基づき報告を行う際、すべての情報を適切に扱うことや、すべての報告要件を満たすことも難関になるかもしれません。

炭素会計は大量の数値・データが関わるだけでなく、現在進行形で発展中の分野であることもそのハードルを上げる要因になっています。民間企業や公的機関の説明責任を担保するため、新たな規格や政策、規制が次々と生まれています。

とにかく、炭素排出量の算出は非常に複雑で、企業活動に関するデータを大量に収集しなければなりません。従来の算出方法では、多くの時間や経営資源を費やすことになるでしょう。

米ボストン・コンサルティング・グループが最近発表した「炭素排出量の測定に関する報告書」によると、調査対象企業の76%が、自社製品・サービスの温室効果ガス排出量を包括的に測定できていませんでした。

企業の報告内容を見ても、まだまだ不正確なものが多く、数カ月前や数年前の状況を報告しているものも散見されます。また、報告の枠組みもまちまちで、独自の不透明な枠組みを使っている場合すらあります。実績を過大評価する”独創的な会計”を行っている企業が少なくありません。幸い、昨今ルールや投資家の要求が厳しくなるなか、規制当局が主導する会計手続きの統一や標準化が始まっています。

Measuring your carbon footprint

炭素会計を行う組織が直面しやすい問題には、以下のようなものがあります。

  • 規制の混同: 地域ごと・産業ごとの規格がいくつも存在するためです。炭素会計手続きの改善を目指し、今も官民で規格・規制づくりが続いています。
  • 二重計上の可能性がある: 同一の排出源が複数のカテゴリで計上されるケースがあります。GHGプロトコルの目下の課題点は、スコープ3の排出源が複数の組織にまたがって計上されることです。よって組織間の純粋な比較が難しくなります。
  • 組織間でデータの質にばらつきがある:炭素会計に用いるデータや各種数値の算出方法が統一されていないために起こる問題です。使用するデータセットの標準化が完了しなければ、業界基準の設定や企業間の比較は困難です。
  • 質の低いデータが集まりやすい:質の高いデータは収集しにくい傾向があるためです。
  • データ源がわかりにくい:一部のデータは、他の組織や消費者と協力しなければ収集できません。排出量を適切に測っていない組織がバリューチェーン上にある場合、スコープ3のデータ収集は特に難しいかもしれません。
  • データが不完全な場合がある:収集したデータが排出量や排出源を正確に反映していない可能性があるためです。
  • 次にとるべき排出削減策がわからない:排出削減に有効(あるいは無効)な行動が、いつも明白なわけではないためです。
  • データを包括的に管理できるツールが少ない:炭素会計データの蓄積と分析に対応したツールはさほど多くありません。

上記以外で、もう少し大きな視点で炭素会計の現状を顧みた場合、情報の正確性への説明責任も十分に担保されていません。多くの規格とさまざまな規制機関があるため、不正確な報告をした場合の処置について、標準的な規範が形成されていないのです。こうした状況がある以上、報告組織から質の高いデータを期待できないかもしれません。

炭素会計のために集めたデータの評価方法は?

炭素会計データを分析・評価する手段として、気候管理・炭素会計プラットフォーム(CMAP)などのツールが信頼を得ています。

CMAPは炭素会計の作業を簡素化するソフトウエアの総称で、炭素会計の算出にかかる時間を数カ月から数日へと大幅に短縮します。

GHGプロトコルや金融機関向けの炭素会計パートナーシップ(PCAF)などのガイドラインをコード化して搭載しているので、炭素排出量の算出が自動で行えます。ユーザーは以下のような利便性を享受できます。

  • 組織の今のデータに基づいたリアルタイムの結果が手に入り、対策を立てられる。
  • 排出削減の進捗状況を継続的に管理できる。
  • 最新のデータを使い、ネットゼロの公約達成に向けた進捗状況を正確に把握できる。
  • ステークホルダーにとって理解しやすく、閲覧しやすい報告を作成できる。

これまで、炭素会計の情報は、複雑なスプレッドシート上で管理されていました。大抵の場合、古いデータを扱っており、しかも、高い料金を払ってコンサルティング会社に丸投げするのが通例でした。

一般的に、炭素会計の算出作業はとても複雑です。そのため、排出量を正確に算出し、報告するための時間や資源、専門知識を各組織が独自で担うことは現実的ではありません。会計ソフトのように使える、効果的な炭素会計ソフトの開発は必然だったのです。優れた炭素会計ソフトウェアには、炭素会計を簡素化・明瞭化し、大企業から中小企業まで、すべての企業に使いやすい特性を持っていることが求められます。

また、CMAPのほか、前述の「ビルト・オン・GHGプロトコル」認証を取得した公式ツールを活用することもできるでしょう。

炭素会計には種類がある?

炭素会計のデータの扱い方は、物理的炭素会計と財務的炭素会計に大別されます。温室効果ガス排出による環境や財務への影響を測るには、どちらの手法も不可欠です。

  • 物理的炭素会計では物理的な数量を測ります。たとえば、バリューチェーンで生じた温室効果ガス排出量がそうです。
  • 財務的炭素会計では金銭的な価値を測ります。たとえば、バリューチェーンから生じる温室効果ガスに紐づくコストがそうです。

今、炭素会計にお金と労力をかけるべき。その理由は?

ステークホルダーからの圧力、政府の規制、企業にとってのコスト節減機会の創出など、組織が脱炭素化に取り組まなければならない理由は複数あります。

今、正確な炭素会計がかつてないほど必要とされています。気候変動に関するパリ協定は、産業革命前からの地球気温の上昇を1.5度未満に抑える目標を定めました。しかし、気温上昇に伴う企業財務への影響は、今や現実味を帯びだしています。同時に、政府の規制は厳しさを増しており、企業や投資家、ステークホルダーの情報開示に影響を及ぼし始めています。ある調査では、83%の消費者が、ブランドは事業活動の持続可能性(サステナビリティ)を重視すべきだと答えました。

sustainable operations

炭素会計にお金と労力をかけるべき理由:

  • 環境に対する自らの影響を軽減し、ネットゼロ達成への世界の取り組みに貢献できる。
  • 自組織の現在排出量データを算出・把握することで、他者との比較や具体的な目標を定められる
  • カーボンクレジットやカーボンオフセットの購入判断にデータを活用できる
  • 十分な情報に基づいて脱炭素化対策の判断を下し、リアルタイムのデータで進捗状況を把握できる。
  • 社内やバリューチェーン上で、どこの排出量が多いのかを割り出せる。それにより、どこで排出量を削減するのが最も効果的かがわかる。
  • 自社の地域や産業に将来課されうる開示規制に対し、先手を打つことができる
  • 業務を改善し、事業支出を削減できる。
  • 温室効果ガスの排出で生じる金銭的コストを明確にすることで、削減努力にかかる時間、労力、コストの必要性を裏付けられる
  • ステークホルダー(取締役会や既存・潜在的な投資家など)が求める気候リスク報告書(に含める情報)を生成できる
  • 補助金・助成金申請、入札に必要な情報を収集・管理できる
  • 気候リスクに関するデータの透明性を確保し、現在・未来の顧客や従業員の信頼を獲得・確立できる
  • 気候変動対策のためのより規模の大きな(政府単位など)調査に情報を提供できる

炭素会計は一筋縄では行きません。膨大なデータを扱い、多くの規定に習熟する必要があるからです。その一方、今後、炭素会計を要する規制や要件の導入が各国で見込まれており、企業・団体にはその準備が求められています。パーセフォニのCMAPは、ワンストップで炭素会計を簡素化・効率化できるソフトウェアです。

パーセフォニのプラットフォームにご興味のある方はこちらからデモをお申し込みください。データ収集、データ整理、算出業務など、驚くほどスムースに炭素会計が行えることを実感してください。

Carbon Accounting Frequently Asked Questions (FAQs)

What is meant by carbon accounting?

Carbon accounting refers to the process of measuring an organization's greenhouse gas emissions. It allows businesses to assess their climate impact, similar to how financial accounting tracks financial impact. Through carbon accounting, companies can better understand and manage their climate-related financial risks and environmental impact.

炭素会計の流れ

An example of carbon accounting is using emissions factors to estimate the amount of greenhouse gas emissions released by a natural gas-fired power plant. By multiplying the emissions factor with the amount of gas burned, it's possible to calculate the emissions of carbon dioxide, methane, and other gases.

What is the use of carbon accounting?

Carbon accounting is essential for quantifying and measuring your company's carbon footprint. It provides valuable insights to help make informed decisions regarding carbon and mitigation strategies. Understanding the use of carbon accounting is crucial for effective sustainability management and understanding climate-related risks and opportunities.

What are the principles of carbon accounting?

The five main principles of carbon accounting are relevance, completeness, consistency, transparency, and accuracy. These principles ensure that carbon accounting and reporting are done effectively and accurately. By adhering to these principles, organizations can accurately measure and report their carbon emissions, helping them in their sustainability efforts.

What are key drivers of carbon accounting?

The key drivers of carbon accounting include regulatory compliance, investor expectations, stakeholder reporting, climate risk mitigation, building credible climate disclosures, net zero target setting, and decarbonization.

What are the challenges of carbon accounting?

Carbon accounting poses several challenges that must be addressed to ensure accurate and reliable assessments. These challenges include calculation errors and data collection issues, defining emissions boundaries, the absence of standardized methodologies, variable data quality and availability, complexities in accounting for Scope 3 emissions, and evolving regulations. Overcoming these obstacles requires investing in robust data management systems, adopting standardized approaches, and staying up-to-date with changing reporting requirements and technologies to improve accuracy and transparency in carbon accounting practices.

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