日本に拠点を置くあいちフィナンシャルグループは、東京証券取引所に上場する金融機関であり、さまざまな金融サービスを提供しています。数年前から、同社はカーボンニュートラルに向けた取り組みを開始しました。その第一歩として、自社の排出量を正確に把握することが必要でした。また、直接排出量だけでなく、投融資ポートフォリオにおける「投融資先の排出量(ファイナンスド・エミッション)」の把握も求められることを認識していました。
あいちフィナンシャルグループは、パートナーとの連携を促進し、グローバル基準に準拠しながら、高い透明性・正確性・効率性を兼ね備えている炭素会計ソフトウェアを探し始めました。そこで選ばれたのがPersefoniです。あいちフィナンシャルグループは、2024年に、Scope 3を含む投融資先の排出量データを盛り込んだ、TCFDに準拠した気候関連開示レポートを作成しています。
効率的で信頼性が高く、国際基準に準拠した算定の必要性
あいちフィナンシャルグループは、カーボンニュートラルを目指すにあたり、投融資先企業の排出量を正確に把握することが不可欠であると認識していました。しかし、その過程でいくつかの課題に直面しました。
まず、GHG排出量をExcelスプレッドシートで管理することは、ファイルの肥大化だけでなく、作業負担の大幅な増加を招くことが明らかになりました。また、手作業による計算ミスや入力ミスのリスクも高まります。さらに、Partnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)の基準に準拠するためには、排出係数や上場企業のデータを継続的に更新する必要がありました。この作業を手動で行うには膨大な時間と専門知識が求められるため、より優れた解決策が必要でした。
Scope 3 データの管理と投融資先との連携
あいちフィナンシャルグループは、炭素会計のプロセスを効率化し、投融資先から信頼性の高いデータを収集し、ファイナンスド・エミッション(投融資先の排出量)のデータ品質を向上させるソリューションを模索しました。その結果、以下の理由からPersefoniの導入を決定しました。
PCAF準拠
導入の決め手のひとつは、PersefoniがPartnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)の基準に準拠した自動計算を提供し、特定の資産や業種ごとの排出量を可視化できる点でした。これにより、コンサルティング会社に外部委託を行ったり、専門知識を持つスタッフを配置したりすることなく、簡単なソフトウェア操作だけでファイナンスド・エミッションを算出できるようになりました。
高い透明性
Persefoniは高い透明性を提供し、第三者認証を容易にし、外部開示への信頼性を向上させました。カーボンレジャー(台帳)を活用することで、計算プロセス、排出係数、データを一元管理でき、企業内の異なる部門から収集されるデータを一つのプラットフォームで管理できるようになりました。
業務効率の向上
自動計算により、ファイナンスド・エミッションの算定・報告にかかる時間が大幅に削減されました。投融資先から手作業で情報を収集し、複数のスプレッドシートで管理する必要がなく、上場企業の財務データやCDP排出量レポートを迅速に取得できるようになったことで、業務の効率が飛躍的に向上しました。
融資先企業のエンゲージメント強化
あいちフィナンシャルグループは、Persefoni Pro(無料版)を投融資先に共有し、融資先企業が銀行に対して排出量データを一貫性・透明性のある形で報告できる仕組みを構築しました。このデータにより、同社はファイナンスド・エミッションの可視化を進めるだけでなく、ポートフォリオ企業の脱炭素目標の設定をサポートすることが可能になりました。
企業の評価向上と信頼性の強化
Persefoniの導入後、あいちフィナンシャルグループは短期的な炭素会計の目標を設定しました。その内容には、Scope 3およびファイナンスド・エミッションの算定、投融資先へのPersefoni Proの導入が含まれています。
同社は、排出量データを年次報告書で開示し、ステークホルダーとの信頼関係の深化を目指しました。この取り組みによって、ESG評価機関による企業評価向上につながり、2024年度のCDP気候変動調査において、2023年度愛知銀行(現あいち銀行)として取得した「C」評価から2ランクアップの「B」評価を取得しています。また、FTSE(フィナンシャル・ダイムズ・ストック・エクスチェンジ・グループ)のFTSE Blossom Japan Sector Relative Indexの構成銘柄にも選定されています。
TCFDに準拠した気候関連開示の実現
2024年5月までに、あいちフィナンシャルグループはScope 1、2、3の排出量を算定しました。このデータを活用し、TCFDに準拠した気候関連開示レポートを作成し、6月に公開しました。さらに、9月には投融資先に対するPersefoni Proの展開を開始しました。
Persefoni導入による主な成果
- Scope 3(カテゴリ1~5)およびファイナンスド・エミッションを開示
- 手作業によるデータ収集・入力の負担を軽減
- PCAF準拠の自動算定を実現
今後の展望
あいちフィナンシャルグループは、これまでの成功を基盤にさらなる発展を目指しています。今後は、炭素会計の高度化、パートナーとの連携強化、社内専門性の向上に注力していくといいます。
現在、同グループは融資以外の上場株式・債券における排出量算定を進め、ファイナンスド・エミッションのデータ精度向上に取り組んでいます。また、日本におけるISSB基準(SSBJ)に準拠した、第三者保証の取得を目指しながら、PCAF基準に沿った報告の強化を進めています。今後もPersefoniを活用し、排出量の可視化、目標設定、削減施策の実施を推進していく考えです。
今回の開示プロセスを通じて、いくつかの改善点が明らかになりました。その中でも最大の課題は、社内および投融資先における意識の向上と理解促進です。GHG排出の影響に対する認識は高まりつつあるものの、さらなる取り組みが求められています。
今後はPersefoni Proの活用を拡大し、炭素会計の重要性に対する意識向上を目指しています。また、社内におけるサポート体制の整備を進め、炭素会計の専門知識向上を目的とした研修・教育プログラムを実施し、組織全体のスキル向上を図っていく方針です。
まとめ
数年前、あいちフィナンシャルグループは炭素会計の取り組みを始めたばかりで、ファイナンスド・エミッションおよびScope 3の排出量を算定するという課題に直面していました。しかし現在では、TCFDおよびPCAFに準拠した気候関連開示を実現し、企業全体および投融資ポートフォリオにおける実質的な排出量削減に向けた取り組みを加速させています。
同社は、Persefoniを活用することで、算定プロセスを効率化し、正確で監査可能かつ国際基準に準拠した排出量データを作成できるようになったと評価しています。ファイナンスド・エミッションを含む全体の気候インパクトを明確に把握したことで、ステークホルダーへの信頼性の高い報告が可能となり、カーボンニュートラルへの取り組みをさらに加速させることができるでしょう。







