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International Sustainability Standards Board (ISSB), Explained

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Article Overview

In January 2024, new standards from the International Sustainability Standards Board (ISSB) kicked into effect. These standards — IFRS S1 and IFRS S2 — have been endorsed for use by securities regulators worldwide and will create a new global baseline for mandatory and voluntary climate disclosure. Businesses can prepare for ISSB-aligned reporting now by ensuring their climate data is traceable, transparent, and reliable.

1. ISSBとは -設立の背景-

「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」は、サステナビリティ関連情報の開示に対して質の高い基準を定め、投資家の情報ニーズをより的確に満たすためにつくられた組織です。 ISSBを設立したのは国際会計基準(IFRS)の策定を担う「IFRS財団」で、きっかけとなったのが、2021年11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)です。 ISSBの活動の主目的は、乱立している報告基準の集約(一本化)です。気候やESGに関する情報開示基準の整理を進め、世界的なサステナビリティ報告の体系をわかりやすく示すのが狙いです。環境・社会・ガバナンス(ESG)分野ではアルファベットの略称がついた報告基準が入り乱れ、関係各社の間では数年前から不満が高まっているという背景があります。

一方で、ISSBの前途は困難だといえそうです。まず、多種多様で一貫性のない規制事項や任意基準をまとめ、サステナビリティ情報の開示に関する世界標準をつくらなければなりません。 しかも、その世界標準には、あらゆる国・地域や企業で採用でき、バランスがよく、将来の状況に合わせ調整しやすい設計であることが求められます。国・地域による異なる規制のベースライン(根幹)として使えるよう、細部をつくり込むことも非常に重要です。

ISSBは以下の2点を念頭に置き、基準づくりを進めています。

  1. 1. 任意のサステナビリティ報告に取って代わる、次世代規制をつくる
  2. 2. ISSB基準を法的な報告義務のベースライン(根幹)に使えるよう、各国規制当局にロードマップ(導入行程表)を提供する

ISSBはまず、有力なサステナビリティ基準・枠組みの運営主体である「気候変動開示基準委員会(CDSB)」と「価値報告財団(VRF)」を組織統合しました。価値報告財団(VRF)は、そもそも「国際統合報告評議会(IIRC)」と「サステナビリティ会計基準審議会(SASB)」が合併してできた組織となります。 ISSB基準については「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の推奨事項を土台として策定が進められています。また、環境情報開示システム運営団体「CDP」による既存の枠組みに基づき、ISSB基準をCDPの質問書に組み込む計画もあります。一連の合併・統合により、サステナビリティ報告の基準につきまとうまとまりのなさや煩雑さ、手間や費用は劇的に軽減される見通しです。

さらにISSBは「GRI (グローバル・レポーティング・イニシアチブ)」や「欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)」との連携にも力を入れています。どちらも企業の情報開示基準を作成している組織で、サステナビリティ報告をそれぞれの枠組みに盛り込んでいます。ISSBは両組織と密接に連携し、欧州で報告義務を課される企業や、サステナビリティ報告の内容や閲覧者を広げたい企業が、両組織の基準を補完的に利用できるように働きかけています。

2. ISSBがIFRS財団の一部である理由は?

IFRS財団は、国際会計基準の策定で20年以上の実績がある非営利の公益団体です。ISSBを新設したほか、「国際会計基準審議会(IASB)」を内部に置き、多様な経験や視点を持ったスタッフを世界中から集めています。 ISSBとIASBを監督する評議員会にも、多様な視点と経験の持ち主が集まっています。その評議員会には、各国規制当局がつくる「証券監督者国際機構(IOSCO)」主宰の「モニタリング・ボード」が関与し、社会への説明責任を高めています。 なお、IOSCO はかつてIFRSの会計基準が誕生した際、その内容を確認し、お墨付きを与えた機関でもあります。その後、IFRSは140カ国以上で遵守が義務付けられるまでになり、多くの国における会計基準として普及しています。 IFRSは立場の異なるステークホルダーたちから意見を聞くため諮問グループを複数設置し、基準策定に際する知見活用を大切にしていますが、ISSBにも同様の仕組みがあります。 IFRS財団はIASBとISSBに対し、議題や基準案に関する諮問手続きや、最終基準書の公表に向けた意思決定手続きを定めています。確かな手順があることで、報告企業や報告の利用者、報告内容の保証機関などの立場を理解、考慮した基準づくりが可能になるわけです。実際、IASBとISSBには世界中から意見が寄せられています。 このように、ISSBは豊かな経験や強固なガバナンス、独立性、意見集約のための透明な手続きを備えており、サステナビリティ情報開示の世界基準づくりに適した組織なのです。

3. なぜISSB基準が重要なのか?

ISSB基準は、サステナビリティ報告をめぐる次世代の規範となっていくでしょう。報告の質と透明性の向上が世界の投資家から求められている今、国境を越えた一貫性と比較可能性を提供するかなめの存在が欠かせません。ISSBはその役割を果たそうとしているのです。  

ISSBは世界中のステークホルダーと協力し、基準に盛り込むサステナビリティ・気候関連情報の精査・選定を進めています。基準作成の一つの目安となるのは、情報の一貫性と信頼性をいかに担保するか、そして、それらの情報は投資家にとってどのように役に立つのか、という点です。 ISSB基準最終版が完成し、同じ基準が各国に普及すれば、投資家が開示情報を比較することはとても簡単になるでしょう。投資家は十分な知識に照らして資産配分を決定できるようになります。また、企業にとっても、サステナビリティ・気候関連のリスクと機会を加味した事業戦略を策定するうえで、ISSBの枠組みが役立つことが容易に予想されます。

4. ISSBがあなたの会社にもたらす影響は?

近い将来、ISSB基準はサステナビリティ報告の新たなグローバル規範となります。サステナビリティ情報に対する投資家や取引先からの要求が強まるなか、規制当局からの圧力有無にかかわらず、自主的にISSB基準を導入する企業も出てくるでしょう。 そのような企業は、ISSB基準を満たすことで、それ以外の開示要件を満たすことにもつながるという利点があります。たとえば、CDPの気候変動に関する質問書は2024年以降、ISSB基準の一部である「気候関連開示基準」(S2)を取り込むことになっています。

ISSB自体には、国・地域や企業に何かを義務付ける権限はありません。しかし、サステナビリティ・気候情報開示に関する今後の規制づくりにおいて、多くの国がISSB基準の活用を検討するはずです。ISSB基準が新たなグローバル規範となれば、たとえ法的義務がなくとも、顧客や投資家、ステークホルダーから同じ水準の情報を求めらることは自然な流れだと思われます。

5. ISSB基準はどんな組織でも採用できる?

ISSB基準は任意利用にも導入可能なので、上場・非上場、企業規模の大小を問わず、サステナビリティ報告時の基準として採用できます。 ISSBとしては、小規模事業者や新興経済国にも幅広く普及してこそ、本来の世界基準になるという理念のもと、あらゆる企業を対象とするフレームワークの構築を進めています。

ISSBは基準だけでなく、追加的なガイダンスや研修教材も開発します。ISSB基準を使うことによる恩恵を、すべての市場参加者に届けるためです。 新興・開発途上国が基準導入によってメリットを得られるよう、そして、時間をかけながら導入を拡大できるよう、ISSBはこれらの経済圏に対して、緩和措置とガイダンスを提供することを発表しました。

ちなみに、すでにTCFDやSASB基準を報告に使っている組織は、ISSB基準への対応を比較的スムースに行うことができるでしょう。ISSB基準は、TCFDやその他既存の枠組みを土台として構築されているからです。

What does each of the ISSB’s standards cover?

The ISSB has 2 proposed standards: (1) IFRS S1 General Requirements for Disclosure of Sustainability-related Financial Information and (2) IFRS S2 Climate-related Disclosures. These standards are not yet final, but the ISSB has held public meetings and provided updates throughout its deliberation process. It considered extensive feedback from preparers and investors and has ensured transparency along the way, so they know what to expect.  

6. ISSBによる"マテリアリティ(重要性)"の定義は?

ISSBによる"マテリアリティ(重要性)"の定義はIFRSと同様です。省略したり、曖昧にしたり、誤って提示したりしたときに、投資判断に影響を及ぼすことが合理的に推測できる場合、その情報を"マテリアル(重要)"とみなします。 言い換えれば、情報の重要性を投資家目線で判断するということです。この定義は、IFRSのサステナビリティ基準に沿った情報開示すべてに適用されます。

7. ISSBによる"サステナビリティ"の定義は?

「企業が各種の資源・関係を持続可能な形で維持する。そして、資源・関係に対して事業のエコシステム全体が持つ依存性や影響力について、短期、中期、長期にわたって管理する能力。企業が将来にわたり、金銭、人、自然といった資源・関係を必要に応じて利用し、目標達成のため適切に存続、発展、再生できる状態」 と定義される見通しです。

この定義は、企業から投資家への価値提供能力にサステナビリティ事業が影響を及ぼし、自社のステークホルダーや地域社会、そして自社自体が依存する自然資源と、自社サステナビリティ事業が密接に関わることを示しています。

「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(S1)の概要

ISSBが定める基準の1件目「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(S1)は、サステナビリティ報告全体に関わる枠組み、原則、そして作成に関するガイダンスです。 主な内容と構造は、TCFDの基本4項目である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」に基づいています。S1はサステナビリティに関連する重要なリスク・機会情報や財務情報について、投資家に焦点を当てた開示基準を定めています。

ISSBは上記のような全般的な報告要件を土台とし、サステナビリティに関する個別的な課題にも基準を定めることを長期目標としています。 長期目標とはしているものの、最終基準の策定直後から、ISSBに則ったかたちで、企業から投資家へ、比較可能情報の提供が開始されることをISSBは期待しています。そのため、S1にはしっかりしたガイダンス・指標が盛り込まれる見通しです。ちなみに、こうしたガイダンスや指標には、既存の基準が活用される見込みです。 ISSBは、各産業個別の要件については、前出の「サステナビリティ会計基準審議会(SASB)」による基準を参照することを推奨しています。ただし、投資家のニーズを満たす場合であれば、他の基準の使用も認めています。 また、2023年2月の会議では、サステナビリティ関連のリスク・機会を特定するための参照先や指標の候補として、前出のGRIによる基準と、EFRAGによる「欧州サステナビリティ報告基準 (ESRS)」を取り入れることを決定しました。 ただし、各企業がこれら基準を採用する際でも、マテリアリティの定義はIFRSに従うことを条件としています。すべての情報開示について、「一般目的財務報告(GPFR=個別・特定の情報ニーズではなく、一般の報告利用者の情報ニーズを満たすための財務報告)」の要件を満たす必要があることが強調されました。

ISSBは今後、他のサステナビリティ関連課題に対する基準づくりの検討に移ります。審議ではSASBなど既存の関連基準について考慮するほか、S1、S2に関する審議と同様、フィードバックの手続きに力を入れる方針です。

「気候関連開示」(S2)の概要

ISSBが定める基準の2件目「気候関連開示」(S2)は、気候関連の”リスクと機会”に焦点を絞り、S1と同じくTCFDの基本4項目を軸としています。 ISSB はS2において、気候関連情報の特定・算定・開示要件の概要を示します。投資家にとっての有用性を保つと同時に、情報開示の規模拡大を目指し、さまざまな企業で採用できる基準を提供します。

具体的な要件は最終基準書が公表されるまでわかりませんが、準備は今からでも始められます。ISSB基準はTCFDを土台としているため、以下の内容を含むことは間違いありません。

ガバナンス

  • サステナビリティ・気候関連の”リスクと機会”を監督する責任は誰が負うか。そしてその責任範囲について(業務上の取り決めや取締役会の権限、その他の指針など)。
  • サステナビリティ・気候関連の”リスクと機会”に関する戦略監督者に相応の技能があることを、どうやって判断するか。リスク・機会について、監督者はどの程度の頻度で議論するか。監督者はどのように目標を設定し、どのように進捗を把握するか。
  • 経営陣はサステナビリティ・気候関連の”リスクと機会”をどのように評価、管理するか。その役割は取締役会全体で担うべきか、特定の管理職や委員会に任せるべきか。任せる場合、担当の管理職や委員会に対する監督はどのように行うか。

戦略

  • サステナビリティ・気候関連の”リスクと機会”のうち、自社の経営モデルや戦略、キャッシュフロー、資金調達、資本コストに対し、短期・中期・長期的な影響が及ぶ可能性が合理的に想定される事象の特定。
  • リスク・機会は、自社の経営モデルやバリューチェーン、意思決定にどう影響するか。
  • リスク・機会に対応するための移行計画は、どのようなものか。
  • 自社の財務状況や業績、キャッシュフローはどのような影響を受けるか(短期、中期、長期的に)。そうしたリスク・機会を財務計画にどう組み込むか。
  • 気候関連の物理的リスクと移行リスクに対する戦略には、どの程度のレジリエンスがあるか。
  • 自社のレジリエンスをどう分析するか。(報告企業には、シナリオ分析の実施と結果・手法の説明が求められる)  

リスク管理

  • サステナビリティ・気候関連のリスクと機会を特定、評価、管理するため、どのような手順を採用しているか。  
  • その手順は、どのような情報や状況、事象に対応しているか。サステナビリティ・気候関連リスクは、その他のリスクに対してどの程度優先されるか。
  • リスクと機会に関連する手順は、リスク全般の管理や経営管理の手順にどう組み込まれているか。

指標と目標

  • 気候関連のリスクと機会をどのように算定、管理、監視するか。それらの業務をどう評価するか。どのような目標を設定し、進捗をどのように把握するか。
  • 産業横断的に比較できる情報を投資家に提供するため、自社とバリューチェーン全体(スコープ1、2、3)の温室効果ガス排出量をどのように開示すべきか。(総量ベースと原単位ベースでの開示。算定は「GHGプロトコル」の基準にのっとり、国・地域ごとの規則が別途ある場合のみ例外とする)。
  • データ収集、仮定・推定に使った技法を選択(または変更)した経緯と理由を、どのように開示すべきか。
  • 組織外から購入した電力・熱など(スコープ2)による温室効果ガス排出量は、どのように算出すべきか(「ロケーション基準」手法などを使用)。
  • バリューチェーン上流・下流(スコープ3)からの間接的な温室効果ガス排出量について、投資家が算出手順を理解できるようにするため、算出に組み込む排出カテゴリをどのように選択、開示すべきか。算出・推定の手法に関する説明や、バリューチェーン上の具体的な活動から収集した一次データによる推定の割合、検証済みデータに基づく推定値の割合など、排出カテゴリに付随する情報をどのように整理・開示すべきか。(ISSBは今後、スコープ3の排出量算定に関する追加ガイダンスを提供する。また、算定範囲の拡大に柔軟に対応できる手法を構築中。詳細は後述する)
  • 資産運用会社や銀行、保険会社が算定する「投融資先の排出量」に関し、どのように情報を開示すべきか。(「金融向け炭素会計パートナーシップ(PCAF)」基準の使用)
  • 気候対策が自社の財務状況に及ぼす影響はどのようなものか。移行リスクと物理的リスクに脆弱な資産や事業活動の量と割合はどの程度か。気候関連の商機は、どのようなものか。気候関連のリスク・機会に対し、どのように、いくらの資金を配分すべきか。
  • 気候対策に関し、どのような目標を定めているか。目標や進捗の測定方法に関して投資家の理解を促すため、どのように詳細な情報を開示すべきか。

8. 算定・報告範囲の柔軟性について

企業からISSBへのサステナビリティ報告に関するフィードバックとして、1. シナリオ分析、そして、2. スコープ3の排出量算定、が困難であるという声が数多く挙がっています。ISSBはそれらのハードルを下げ、さまざまな企業が採用できる最終基準をつくるため、算定の難しい項目は推定に基づき対処することとしました。 また、推定方法について、「過大なコストや労力をかけずにアクセスできる、合理的で裏付け可能な情報」に基づき開示を行うという、IFRSで実績のある考え方を採用しています。  

ISSBや投資家、報告企業は皆、スコープ3を含む算定に関して困難が待ち受けていることを認識しています。推定に関する上記の考え方は負担をある程度和らげてくれますが、情報開示規制がなくなるわけではありません。 ISSBはこの考え方の解釈について追加ガイダンスを提供する以外にも、企業が困難に対処し、サステナビリティ関連のリスク・機会をめぐり市場とうまく対話するためのガイダンスや能力構築支援という、様々なサポート施策を予定しています。

シナリオ分析の定義はそれほど厳しいものではありません。たとえばスコープ2では、気候関連のリスクと機会の分析を定性的・叙述的に行うことが認められています。データの質が高まり、シナリオ分析をめぐる市場の成熟が進み、報告企業の能力が向上するのに合わせ、定量的かつ包括的なシナリオ分析へと取り組みを広げられるようになっています。

スコープ3の排出量算定についても、段階的に取り組みを拡大するやり方を重視しています。たとえば、以下の通りです。

  • スコープ3の報告について、ISSB基準の発効1年目を猶予期間とし、2年目から要件を適用する。
  • バリューチェーン上の企業から提供される情報について、会計期が異なるデータを算定に使うことを認める。
  • 現時点で異なる算定規則を採用している企業に対し、移行期間を認める。

スコープ3の排出量算定において、投資家に役立つ開示をより意識するのであれば、算出手順や推定・仮定の条件を説明することも大切になってきます。 たとえば、スコープ3(の中の該当カテゴリ)排出量を算出することが現実的に不可能だと判断した企業には、排出管理方法や指針を説明することが求められます。 一方で、そもそも企業が算出を断念せずにすむよう、ISSBは算出開始ガイダンスを作成する予定です。さらに、協力団体も巻き込みながら、企業内の算出能力構築支援を通じて、スコープ3算定・開示の広がりを後押ししていきます。

最後に、ISSBは規制当局(国内規制作成者)に対し、に「セーフハーバー(免責・減責条項)」規定を採用することを呼びかける予定です。これにより、スコープ3算定に取り組む企業に対して安心感を与えることができます。

9. ISSB基準の施行時期

パーセフォニの予測では、スコープ2、スコープ2の最終基準書は2023年6月末までに公表されると考えています。基準の公表後、各企業が任意で基準を採用することは可能です。一方で、すべての国・地域、すべて規模の企業が、正式に本基準を採用できるのは2024年1月1日からとなります。

10. 今後、ISSB基準の遵守が義務付けられる国・地域

ISSBは独立した立場で国際基準を策定する組織であり、国・地域や企業に何らかの要件を課すことはありません。ISSB基準を用いて開示規則をつくることを決めた国・地域が、それぞれ個別に詳細な適用対象や発効日を定めることになります。たとえば、前出の証券監督者国際機構(IOSCO)は、ISSBが最終基準書を公表したあと、IOSCO加盟機関や世界の証券規制当局がISSB基準を公認するかどうかを検討中です。

11. 開示・報告内容の保証について

投資家などのステークホルダーは、温室効果ガス排出量をはじめとする気候関連の開示情報に対し、保証を求めます。第三者機関から保証を受けるというプロセスが、情報の信頼性とデータの質を高めることに役立つからです。投資家の間では近年、保証に関する世界標準を求める声が上がっています。

IOSCOは2022年9月の声明で、企業のサステナビリティ報告に対する保証基準の作成を基準設定機関に呼びかけました。また、同じ声明で、投資家や証券発行体、保証機関、基準設定機関との対話を通じ、報告の信頼性を保証で裏打ちする必要が示されたと説明しています。 「国際監査・保証基準審議会(IAASB)」と「国際会計士倫理基準審議会(IESBA)」は一連の流れを受け、サステナビリティに関する保証提供の基準策定を進めています。国際会計基準やサステナビリティ基準、保証基準の互換性の確保を目指して互いに連携し、ISSBとも協力しています。

テクノロジーを活用し、企業は堅実な開示・報告を

パーセフォニのようなソフトウェア導入のメリットは、温室効果ガス排出量の算定・報告のコストや面倒臭さの大幅な軽減や正確性の向上だけではありません。結果的に、企業は、ISSB基準にしっかりと準拠した開示報告ができるようになるのです。また、幅広い保証ニーズに対応するための信頼性も担保することができます。 排出量の算定・開示を初めて行う企業でも、報告範囲をより広げていこうとする企業でも、ソフトウェアは、作業の単純化・効率化を実現します。しかも、その守備範囲は、算定・報告だけでなく、削減計画を作成する段階に至るまでカバーしており、企業の効果的な脱炭素化には欠かせないツールとなるでしょう。

- データ収集を効率化 炭素量の算定に必要なデータ収集をより簡素化・効率化する機能も特徴的です。 この機能は、直接的に、収集コストを引き下げることに繋がります。データの入力は、API経由でも、一括アップロードでも、手作業でも可能です。 その中でAPIは、最も効率的なデータ収集方法といえるでしょう。APIを使えば、データが財務システムや電力・水道会社などからソフトウェアへと直接、しかもリアルタイムで流れ込みます。現在、多くの企業がスプレッドシートを使ってのデータ入力や質問書への返答を行っており、多大な時間と労力を費やしていますが、APIを活用すれば、時間も労力も一気に節約できるのです。  

- 適切な算定式を使って開示 収集したデータに適切な排出係数をかけあわせ、GHGプロトコルに沿って温室効果ガス排出量を導き出す機能は炭素会計ソフトウェアの肝となります。また、”ファイナンスト・エミッション(投融資先の排出量)”の算定・開示の際には、PCAFガイドラインに沿った算出が必要になります(パーセフォニのプラットフォームはGHGPもPCAFも標準装備)。 排出量の算出は、コンサルティング会社に頼れば高くつき、スプレッドシートを使えば時間がかかる作業です。しかし、ソフトウェアなら、その作業を円滑化、合理化できます。さらに、手作業に比べて算出時に間違いが起こる可能性も限りなくゼロに減らすことができ、作業の包括的な透明性も担保できます。

最後に、ソフトウェアにできることは、温室効果ガス排出量の算定と報告だけではありません。たとえば科学的根拠に基づく目標の作成。そしてそれを踏まえながら、サステナビリティ戦略の進捗管理や、脱炭素目標の達成に向けた意思決定の改善に活用することもできるのです。 温室効果ガス排出量の算定・報告作業が簡単になれば、企業にとってより本質的な事業である、削減施策の実行・推進や、情報開示によるメリットを追求することに時間やリソースを振り向けられるようにもなるでしょう。

パーセフォニの 炭素会計プラットフォーム は、まもなく策定が予定されるISSB基準に沿った開示報告を全面サポートします。

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